特定非営利活動法人 日本CT技術学会

理事長挨拶

日本CT技術学会の責務について

船間芳憲

特定非営利活動法人 日本CT技術学会 理事長
熊本大学大学院生命科学研究部・医用画像解析学講座 教授
船間 芳憲

 この度、特定非営利活動(NPO)法人日本CT技術学会の理事長を拝命することとなりました。重い責任を担い身の引き締まる思いです。本学会は金沢大学の市川勝弘前初代理事長のリーダーシップのもと2012年の11月より前身の日本CT技術研究会として設立いたしました。その後2014年12月に本学会として名称変更をおこない現在に至っております。
 本学会は、会員の皆様へ学術大会やセミナー、学術雑誌、テクニカルガイドラインなどを通して、CT技術の質や専門性を高めるための活動を多岐にわたり展開し、会員の皆様の必要な情報や疑問解決に対し、先駆的かつ真摯に取り組んでまいりました。また、本学会の会員の皆様が取り扱うCT装置や機器等は、本学会へ多大なご協力を賜る企業のご尽力により、被ばく線量管理やモニタ精度管理、情報セキュリティーなど医療DXに関して先駆的であると言っても過言ではありません。
 今後も本学会の活動が時代の潮流に乗り、継続性と流動性を持って発展させることができ、医療の均てん化ならびに人材育成へと次世代を見据えて貢献することができればと考えております。また、国際的な視野を持ち、私どもの優れた学術内容を世界に発信していくことも重要です。これにより、CT技術のグローバルスタンダードに寄与いたします。医療機器の特性を踏まえつつ安全管理も含めて、良質な医療の一翼を担うために本学会の使命を痛切に感じております。
 皆様の一層のご協力、ご支援のほど、どうぞよろしくお願い申し上げます。



研究発表のすすめ(先輩や指導者の皆様に 初代理事長 市川勝弘先生 記載)

 学会の三本柱は、どこの学会でも“論文”、“研究発表”、“教育”です。研究発表は、論文を書いて世に研究成果を公表し社会貢献をする、または貢献のための一情報を提供するための前段階として不可欠なものです。よって、論文の足がかりとなるという観点で最も大切なものでもあります。  研究発表は、決められたルールの中で非常に短い時間で行われます。与えられた時間が短いからといって、時間超過をすることは、研究者の倫理及び社会通念上あってはならないことです。そしてルールと時間制限があるために、研究発表では発表者またはその“指導者”の力量が大きく影響します。若手に試しにやらせる風潮がありますが、指導者にはルールを遵守して研究内容を的確に伝える技術と技量、すなわち研究における原理・原則の正確な知識が必要であり、それを無しに“試しにやらせる”ことは困難です。

発表内容に求められるもの

 背景→目的→方法→結果→考察→リミテーション→結論。これらの解説がほとんどの場合義務付けられます。発表者とその指導者は、これらに求められる最低限のルールや遵守事項を知る必要があります。

背景

 背景では、自分の研究のモチベーションとなったこれまでの情勢を簡潔に述べ、研究の必要性を説きます。これは決して“施設個々の事情に基づくものではなく”、広く一般に認められるものでなければなりません。そのためには、過去にどのような研究成果が報告され、実際に医療現場でどのような手法が一般化しているか、丹念にリサーチする必要があります。
 そのための一助として、JSCTでは、過去の研究論文を広く調査してまとめ上げたJSCTテクニカルガイドラインを会員向けに提供しています。JSCT会員はこれを閲覧することで、研究背景を知ることができ、自身の研究のモチベーションをわかりやすく位置づけることができます。

目的

 目的は、背景から導き出された明確かつ達成可能な範囲のものでなければなりません。例えば、“・・の最適化”や、“至適条件の検討”をよく見かけますが、研究結果がそれを満たした発表を見ることはほぼありません。目的は、限定条件下で実現可能な範囲に留める必要があり、結論にはそれに対する明確な達成度が示されなければなりません。

方法

 方法は、研究を遂行した順序とそれぞれの理由付けを明確かつ簡潔に述べます。これは、決して行ったプロセスのすべてをスライドに詰め込むことを意味していません。聴衆に対し短い時間で主たる内容を理解してもらうには、プロセスの重要なところだけをスライドに提示することは、研究発表の基本の一つです。
 たとえば、「使用機器はスライドに示すとおりです」と話し、10行近い項目や数字を示すことがあります。このような行為は、発表者やその指導者が“聴衆の立場に立ち、自分の研究を理解してもらう”ことを疎かにしていることを公然と示している、と言っても過言ではありません。

結果

 結果は、比較対象が明確である必要があり、評価結果の妥当性がわかりやすく提示されていることが重要です。
 たとえば、グラフを4つ~6つほど同時に示して、「細かくて申し訳ありませんが」と前置きすることや、1つのグラフに多数の曲線が示されその指し示しもないことありますが、その発表には“聴衆に自分が示したい結果を理解してもらう”姿勢が感じられません。

考察

 考察では、結果のオウム返しで時間を費やすことがないことが重要です。研究目的と方法との関係から結果の意味するものが何なのかを、参考となる研究成果や明らかとなっている原理などと照らし合わせて、結果の妥当性や結果から分からなかったことを含めて述べます。

リミテーション

 最適化や至適条件の検討が適切でないことは、リミテーションの項目が研究発表(論文でも必須)に不可欠であることからも理解できます。条件を限定し研究目的を設定することで、結論を明確に示せるだけでなく、このリミテーションを述べることで、定めた条件を再度聴衆に示すことができます。

結論

 結論は、「目的」の目指すものが、どのように達成されたか、どの範囲で証明されたかを“簡潔に”に示します。必要以上に行数があるとか、聴衆が目的は何であったのかを疑問視するような内容であってはなりません。例として挙げた“最適化や至適条件の検討”のような達成確率の低い研究目的でなく,結論を明確にできるような目的設定を行うことが大切です。

<再度、研究発表のすすめ(先輩や指導者の皆様に)>

 研究発表は、学会の中で最も重要な位置づけにあります。JSCTでは、特にそれを重視しています。若手に“試しにやらせる”ことの多い先輩や指導者の皆様には、的確な指導の上で研究発表に導いてください。そして、自らが創造したアイデアで、社会貢献を目指し自らが発表を行い、若手研究者に刺激を与えてください。
 研究発表を継続することでひとまわり大きな力量が身につき、その長年の成果としてCT技術での真の社会貢献ができたならば、それはCT技術研究者としての大きな歓びとなり、後輩諸氏への更なる刺激となることでしょう。

2021年(令和3年)10月記